王兆軍

Wáng Zhàojūn
王兆軍
おう・ちょうぐん

王兆軍小伝:

 1947年生まれ、山東臨沂の人。
 作家はそれぞれ自分の生活領域に縛られている。それは作品の題材の源となるだけでなく、その藝術風格の形成を促す。王兆軍は自分の故郷に30年暮らし、その現実的風情、歴史的変遷、人物の離合と喜びや悲しみを熟知している。その小説、散文、報告文学は、児童題材の作品も含めて、すべて沂蒙山区に取材したものである。彼はリアリズムの手法で、忠実に農村の生活を描写している。
 生活はまた作家を変えていく。幼年期の王兆軍は両親のお膳立てにしたがって、字が読み書きできる一人の農民になろうとした。大学に行ってからようやく創作を始めたのである。現在までに、中・短篇小説、報告文学、散文など60編余りを発表している。なかでも「払暁前的葬礼」と「原野在呼喚」は同時にそれぞれ全国第三次優秀中篇小説奨と優秀報告文学奨を受賞した。

(『蝌蚪與龍』作家出版社1986)

 
王兆軍自伝

 私は1947年山東省臨沂県の貧しく閉ざされた村に生まれた。幼年期の記憶では、着るものと食べ物以外に何も欲しいものはなかった。自分なりに思うようにならないことや上幸もあったが、両親や村の人々に比べれば、まだ順調で幸運な方である。彼等は今でも荒れ果てた土地で衣食のためにあくせく働いているのだ。
 ローラーを引いたり、水路をつくったり、畑に犂をいれ、作物を刈り取り、あらゆる農作業を経験した。教師にもなり、農村の末端幹部もやったことがある。1977年に復旦大学に行って学んだ。私は生活に感謝しなければならない。私があらゆる人生の辛酸をなめつくし、作品の執筆という地獄の門に入るように仕向けたからである。
 1980年から中・短篇小説、報告文学、散文など7,80編を発表したが、そのうち「払暁前的葬礼」と「原野在呼喚」は同時にそれぞれ全国第三次優秀中篇小説奨と優秀報告文学奨を受賞した。今はそれも色褪せて見える。私の作品は文章が粗削りであるが、思想性はある。私は現実の生活に注目するタイプの作家だ。私は自分の世代の問題は、できるかぎり自分の世代で解決しなければならないという主張をもっている。我々は希望を若い世代に託すると同時に、しばしば苦しみも若い世代に残してしまう。それは現代人の賢いところだが、その賢さは一種の堕落なのである。

(『盲流世家』作家出版社1987)

作品集・単行本

『蝌蚪與龍』中・短篇小説・報告文学集 作家出版社 文学新星叢書第一輯 1986.4/2.30元
『盲流世家』長篇小説 作家出版社 当代小説文庫 1987.7/3.15元

邦訳

「落鳳坡の人々」(落鳳坡人物)田畑佐和子/訳 季刊現代中国小説 23 1992.10

作成:青野繁治

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