瑪拉沁夫小伝:
当代の著名モンゴル族作家。1930年7月15日生まれ。遼寧省吐黙特旗黒城子村の人。幼年期より家庭の暮らし向きは貧しく、兄が王旦那のもとで奴隷働きをして得たわずかなお金でなんとか七年間学校に通った。1945年八路軍に参加。翌年内モンゴル文工団に入り、創作を開始、戦地通信や演劇台本などを書いた。1948年8月中国共産党に加入。
1951年科爾沁草原で大衆工作に従事し、処女小説「科爾沁草原的人們」を書き、モンゴル族の青年が特務を捕え、牧草地を救う勇ましい行為を描写した。この小説は文藝界で重視され、読者からも熱烈な歓迎をうけた。翌年、張海黙と共同で小説を『草原上的人們』という映画に改編した。この映画は文化部が発表した物語映画賞の三等賞に選ばれた。
1952年秋、中央文学研究所に入って学習し、数多くの著名作家から指導を受ける。その頃から長篇小説『茫茫的草原』(作家出版社 1957、改訂版1963年)の構想と創作を始めた。この小説は内モンゴル察哈爾草原の人民が、中国共産党の指導のもとに、内モンゴル自治運動と解放戦争初期の段階で行なった革命的闘争を描いている。党の民族政策の力を重点的に表現し、内モンゴル人民が国民党の大漢族主義と反動的な民族上層分子に反対し、広範な民族統一戦線を打ち建て、解放を得るという重大な歴史的主題を描き出している。それは解放後モンゴル人民の生活と闘争を描いた最初の長篇小説であった。作者は抒情的タッチで、環境や自然風景の描写と人物の精神世界を緊密に結合し、清新、明朗、素朴、濃厚な草原の息吹をあげ、独特の民族的風格を備えている。小説は内モンゴル自治区成立10周年文学コンクールの一等賞を獲得した。
1954年中国作家協会に加入。これは作家協会における最初の少数民族会員であった。二度にわたり中国作家代表団のメンバーとして外国を訪問している。1956年からずっと作家協会内モンゴル分会の副主席をつとめている。
1958年にある監督と共同で映画シナリオ『草原晨曲』を書き、翌年映画を撮影した。そのほか数十編の短編を書いて『科爾沁草原的人們』(1953年、人民文学出版社)、『春的喜歌』(1955年、作家出版社)及び『花的草原』(1962年作家出版社、1978年再版)にまとめている。そのうち多くの短編は、国内の兄弟民族の言語に訳されているほか、英語、ロシア語、日本語、フランス語、エスペラント語などに翻訳された。文化革命後は、映画シナリオ『砂漠的春天』(1975年撮影)『祖国呵,母親!』(1977年撮影)を書いた。後者は比較的深く、1946年前後の、モンゴル族人民が党と毛沢東の指導のもとに、解放闘争を行なう姿を描き、党の民族政策を熱く称え、祖国統一、民族団結の重要主題を表現し、国内国外いずれも上映後好評を博した。
(『中国文学家辞典・現代第一分冊』四川人民出版社1979.12)
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