葉蔚林自伝
1934年12月20日広東省恵陽県の秋長に生まれる。祖先は農業に従事しており、また故郷を離れて沿海地区に行く者もあった。私の父は、海外の親戚の援助で大学卒業まで勉強し、その後、人生の大半を中学校教師として過ごした。母は広州執信女子中学を卒業し、彼女もまた小学校の教師をしていた。このように彼も知識分子の家庭に生まれた。
 私は子供時代を村で過ごした。農村の伝統生活は彼に大きな影響を与えた。６歳で小学校に入学し、父母の良い影響のもと、幼い頃より中国古典詩歌や通俗演義小説を好んだ。12歳になり、県の中学校に入学した。このころ中国は抗日戦争に勝利したばかりであった。県が香港と隣接していたため､香港から入ってきたロシア文学や北方解放文学に触れる機会に恵まれた。私は特にツルゲーネフと孫犂を熱愛した。
1949年末故郷が解放された。彼は1950年10月に学校を離れ中国人民解放軍に参加した。軍隊には10年おり、文工団員、文化教員、助手、幹事、団体クラブ主任などを勤めた。彼の所属していた国境警備隊の任務は重く、生活は困難に満ちていた。これらのことすべてが極めて深い印象を与えた.1955年から彼は聞いたり感じたりしたことを文学形式にまとめはじめたが、それが思いのほか成功を収めそれから彼の文学生涯が始まった。1958年までに本を２冊出版した。
1960年部隊を離れ湖南へ移った。始めは湖南省歌舞団で歌詞作りに携わっていたが１年後に一家を挙げて湘南山区の資興県に下放し、２年間そこで暮らした。その期間農村のいろいろな運動に参加し、湘南の農村をよく理解するようになり、中国農民の辛さと喜びをたくさん体験した。1963年湖南省の歌舞団にもどった。
彼がちょうど数年間文学創作をしようと準備していた頃文化大革命が始まった。この災禍のなか、彼と同世代の人はみな甚だしく不公平な待遇を受けたが薄幸な人にくらべるととるに足りないものだった。1969年夏に彼はまた下放され、湘南の最もへんぴで遠い江華山区の生産隊に入隊し、そこに定住し、３年半働いた。以後、県の劇団に配属され，零陵地区文化局で働いた。十年間の試練は生活と人生に対して彼に更に深く認識させ理解させた。それによって彼の創作の基礎が固まった｡
1979年また故郷にもどり、創作をすることになった。党の１１期３中全会のもと、彼の精神と芸術は束縛をとかれ、よい成績を残した。
今現在、彼は、中国作家協会と中国音楽家協会の会員であり、中国作家協会湖南分会の副主席である。
独特の体験の中での世界の表現
創作が生活となり、創作は生活を表現した。しかし、この種の生活においての作家の独特の体験といったこの種の表現は作家の個性的な独特の表現でなければならない。作家は皆自分の世界を持っていないといけない。
文学の力量は正しい理念と認識作用を伝えることにあるのではなく、主に人々の審美需要と感情需要とを満足させることにある。このため作家の任務は新鮮で生き生きとした芸術イメージを作り上げ、生活の詳細を掲示する事である。このため創作にはその広大な天地がある。それは、その時代の弊害にあたり、注意することで人を目覚めさせ、感じて悟らせるように導き、考えることを教え、感極まってため息をつかせ、心や目を楽しませ、近くから遠くまで、遠くから近くまで重点がどこにあるのかにかかわらず、文学の道から離れないことである。
生活経験は、作家の創作範囲と創作風格を決定することがおおい。したがって、どの作家にも限界性がある。限界は恐れることはない。努力して限界の中から自由を獲得できたら、それは、優秀な作品と優秀な作家が生まれたということになる。
しっかりと自分の最もよく理解している物、最も深い生活の体験を書くことは、しっかりと自分の最も熟練しているもの最も自分の情感を表現するのにふさわしい方法を用いて書くことでありこれがまさに自己の創作経験の中の最も重要な経験である。
（『中国当代作家百人傳』求実出版社1989）
|
