鄧剛

Dèng Gāng
鄧剛
とう・ごう

 

(1945- )

 

鄧剛自伝:

  私は鄧剛、本名は馬全理である。1945年生まれ。漢族。祖籍は山東省の牟平県である。組立工、溶接工、品質検査員などの仕事をした。1979年から作品を発表しはじめる。「迷人的海」「陣痛」などの作品がある。

1985年中国作家協会理事に選ばれた。現在中国作家協会遼寧省分会副主席である。

海の啓示

 今中国文学は世界文学へ向う軌道を歩み出している。従って、我々のかつての藝術手段や思惟方式には、全く新しい変化が必要である。そうしなければ軌道全体の速度に適応していけない。ますます高度になる情報伝達の手段は、全世界を我々の前にありありと見せ付ける、と同時に人間同士の心の距離を急激に短縮しているのである。だから如何なる作家も自分が生活している地区、民族や国家に対する思索を、知らず知らず、上可避的に世界意識――人類の総体意識でもある――のなかに溶け込ませることになるのだ。その主な内容は、人類が如何にしてこの世界に立派にしかも長く存在しつづけるかというものだ。思うに日増しにひどくなる汚染や生態系バランスの破壊という危機のなかで、イデオロギーや戦争紛争、民族の尊厳、領土の境界問題は、とりあえず二の次にして、人類の主要行為の表現を、人類がみずからつくりだした巨大な問題の対処に向けなければならない。そこにこそ世界文学の次の主たる内容が孕まれているのだ。

 私は自分が熟知する海を描くことに力を注いできた。しかし30年前の海を思い出すと、わずか30年のことなのに、美しいおとぎばなしの世界を回想するような気がする。今はどうか。何もない海に泳ぎ出すごとに恐怖と驚愕を覚える。未来の人類が果たして今日パンダを救うようにして自分自身を救済できるのかどうか、はなはだ心もとない。

 しかし私は楽観主義者である。未来に対する信頼と希望にあふれている。憂えることは解決すること、慌てることは落ち着くことである。全人類の存亡を目の前にして文学は功利性を有するのみである。だから私のペンは無自覚をやめ、自覚的に人類のよりよい生存という総体意識のなかに進んでいく。それはつまり世界文学の中に進んでいくことにほかならない。

(『中国当代作家百人傳』求実出版社1989)

作品集・単行本

『迷人的海』中篇小説集 春風文藝出版社 1984
『龍兵過』短篇小説集 中国文聯出版公司 1985

主要作品

「蛤蜊灘」短篇小説 『人民文学』1985.1
「我們這幇海碰子」短篇小説 『青年文学』1985.2
「我是我」中篇小説 『上海文学』1985.4
「全是真事」短篇小説二題 『人民文学』1986.2
「我住的城市靠海」短篇小説 『膠東文学』1986.6

受賞作品

「陣痛」1983年全国優秀短篇小説奨
「迷人的海」全国第3次(1983-1984)優秀中篇小説奨

 
作成:青野繁治

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