サイノフォン

HuáyǔYǔxìWénxué
華語語系文学
サイノフォン(SINOPHONE)

 米国籍華人研究者王徳威によれば、「サイノフォン」とは、もともと大陸以外の台湾、香港、マカオといった「大中華」エリアの文学と南洋(マレーシア、シンガポールなど)の華人文学(馬華文学)を指したが、華語で書かれた文学の世界的広がりにともない、「海外中国文学」とか「世界華文文学」という呼称が、その実態にそぐわないものとなりつつあることをふまえて用いられるようになった。王徳威氏は、「PHONE」を「風feng」と訳すことによって、詩経・国風を連想したり、風俗、風土、風格のように連想が広がり、「豊かな意味が導きだされる」と述べている。
 王徳威氏はまた、「サイノフォンは現代中国を出発点とした海外華文文学ではありませんし、欧米の反帝国主義、反植民地主義を信奉しその東洋版をめざすべきでもないでしょう。サイノフォンは海外のダイグロシア(二言語併存)状態に端を発しますが、中国大陸を含む漢族と非漢族の文学にまで広がり、それによって対話の可能性を拓きます。それはほかでもなく、華語の多元性、流動性、混成性を強調するのであれば、サイノフォンは国家の越界、民族性、民間の社会階層などの諸方面で越境し、それに続く挑戦を引き受けねばならないからです」(及川茜/訳)と、その意義を説明している。
 なお白水社サイノフォンシリーズの編者として、王徳威、高嘉謙、黄英哲、張錦忠、及川茜、濱田麻矢の名がある。

(参考:王徳威「<サイノフォン>シリーズ刊行に寄せて」『華語文学の新しい風』2022.11.5)

『サイノフォン1 華語文学の新しい風』白水社 2022.11.5

白先勇(小笠原淳/訳)「シカゴの死」
ダデラヴァン・イバウ(津守陽/訳)『グッバイ、イーグル』抄
西西(濱田麻矢/訳)「浮都ものがたり」
朱天心(濱田麻矢/訳)『三十三年京都の夢』
宋沢莱(津守陽/訳)「傷痕」
張貴興(松浦恆雄/訳)「バトゥ」
李娟(濱田麻矢/訳)「突然現れたわたし」
酪以軍(濱田麻矢/訳)「チュニック、文字を作る」
林俊頴(三須祐介/訳)「霧月十八日」
李永平(及川茜/訳)「ダヤクの妻」
ハ・ジン(小笠原淳/訳)「子どもの本性」
厳歌苓(白井重範/訳)「大陸妹」
楊顕恵(田村容子/訳)「上海から来た女」
ワリス・ノカン(濱田麻矢/訳)「父祖の名」
廖偉棠(及川茜/訳)「旺角の夜と霧」
陳大為(及川茜/訳)「南洋にて」
劉慈欣(小笠原淳/訳)「西洋」
解説 内外を攪拌し、吹きぬける華の風 濱田麻矢

『サイノフォン2 南洋人民共和国備忘録』黄錦樹/著 福家道信ほか/訳 白水社 2025.11.10

第一部
サーカス団が天から降ってきたとき 松浦恆雄/訳
その年私はマラヤに帰った 大東和重/訳
瓶の中の手稿・呪詛残篇 福家道信/訳
マラヤ人民共和国備忘録 福家道信/訳
森からの手紙 及川茜/訳
亡き兄を尋ねて 松浦恆雄/訳 あなたのおかけになった電話はただいま使われておりません番号をお確かめの上おかけ直しください 松浦恆雄/訳
山道 羽田朝子/訳
第二部
もし父が創作をしていたら 大東和重/訳
凄惨にして無言の口 福家道信/訳
なお扶餘を見るがごとし 福家道信/訳
マラヤ共産党を追撃中に大足出現 福家道信/訳
もしもあなたが風なら 松浦恆雄/訳
隠遁者 大東和重/訳
最後の郷土 福家道信/訳
第三部
蟹 豊田周子/訳
父の亡くなったあの年 松浦恆雄/訳
九つの言語で書く愛の詩 白水紀子/訳
渓流のほとりにて 羽田朝子/訳
泥沼の足跡 大東和重/訳
雨が降る 白水紀子/訳
祝福 福家道信/訳
帰還 及川茜/訳
解説 黄錦樹を読む楽しさ 福家道信

 
作成:青野繁治

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