反文学

Fǎn Wénxué
反文学
反文学(はんぶんがく、アンチ文学)

 西洋で、いま比較的流行している一種の思想傾向であり、西洋の現代文学の中の反現実主義運動の産物である。 反文学思潮の誕生は現代の西洋哲学、心理学及び現代の生活方式から多大な影響を受けている。現代の芸術形式、例えば、映画や撮影なども反文学思潮の発展にある程度の作用を及ぼしている。いわゆる”反文学”とは、決して文学を排除するということではない。伝統的な文学思想に対する一種の反発である。

 反文学の特徴は、おおよそ次のいくつかの面に表れる。
 1.伝統文学の中に浸透した歴史進歩の信念、完璧な個人の探求、人道主義の理想、及び作家の社会的使命感は、作家の心の中から既に失われた。深い困惑や懐疑、どこにも帰依することのできない心情がそれらにとって代わっている。
 2.作家は、現象世界の真実を疑いさらには否定し、一種の超現実的な、形而上学思想的な真実を追究する。
 3.作家の役割も変化した。作家は、もはや、作品に対して全能な創造者ではない。彼ができることはただ、忠実に、また客観的に人の印象や感情、感覚を複製することだけだ。作品の内容に対して評論もしない。
 4.作家は現実社会を表現することを軽視し、さらには避ける。文学作品にとって形式こそが根本であるとみなしている。

 ”反文学”は、伝統文学の中の鮮やかで生き生きとした言葉や人物、深い思想、作品の構成および文学の娯楽感化機能を消し去り、それに代わり、人に対する感覚および感覚の中に映し出される世界の極めて緻密でこまごまとした描写を重視する。極端な作品では、数人の人物が同じ名前を共有し、文章記号およびページ番号などが消え去り、作品解釈の確実性を失わせようと意図する。

 ”反文学”思潮により、文学作品を通して客観的世界や人の主観的感覚の中には一定の深みがあるということが示される。が、一方”反文学”思潮は、文学作品を異常に難解で読みにくいものにも変えてしまう。このように、作品が大衆から離れていったのも、また無理のないことであった。

(『文芸学新概念辞典』文化芸術出版社 1990年4月)

作成:田中庸一

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