寻根文学

Xúngēn Wénxué
寻根文学
ルーツ文学

 「寻根」(ルーツ探し)は、1980年代中期の中国大陸で巻き起こった熱烈な文学思潮であった。この文学思潮は「五四」時代の文学思潮のなかに、その淵源を探し出すことができ、70年代の末に世界文壇をゆるがしたアメリカの黒人作家のルーツ探しの長篇小説『ルーツ』が、我々に一定の啓蒙と模範としての意義を備えていた、とはいえ、国内の文壇で「ルーツ探し熱」が出現し、一種の比較的普遍的な文学現象を形成し、人々の熱烈な議論を巻き起こしたのは、結局1985年のことであった。

「ルーツ探し」の意識は、開放の年代に生まれた。それは開放的思想観念の産物である。「ルーツ(探しの)文学」は「傷痕文学」、「反思文学」という文学の段階を経た後、文学観念上の理性精神が沁みこんで結んだ結果である。 それは文学と文化を関連付けた思考をし、中国の広く深い文化の中に「ルーツ」を探そうとし、我々の民族文化を形成する根拠を追究する。 すなわちルーツ文学は、民間の生活(特に原始ないし半原始の生活)や伝統文化の中から、活力や生気をもった内容を発掘し、わが民族の思惟の優位性と民族の特色を探し出そうとするが、そこには国民性の劣悪性を暴露批判する意味も含まれていた。

ルーツ文学の核心は、歴史の変革期における、人々の自分自身や生活の未来に対する想像である。 しかもそれは歴史的な、過去の、或いは原始の野蛮な生活を創作の題材とし、未来の生活に対する認識を表現する。 近年来、老中青世代の作家たちの少なからぬ人が、自覚的に民族文化の断層を発掘しようとし、民族の魂に適した異なる形式の美学風格を探求している。 彼らは創作においても理論においても業績を残した。かれらを「ルーツ(探し)派」作家、あるいは「民族文化派」と呼ぶ人もいる。

韓少功《爸爸爸》阿城《棋王》賈平凹《商州初录》張承志《九座宮殿》鄭万隆《异乡异闻》系列、李杭育《葛川江》系列小説などは、すべてこの思潮の産物である。

(『中国現当代文学辞典』 遼寧教育出版社 1989)

 ルーツ探しの影響は文化面にも現れ、蘇暁康、王魯湘のテレビ・ドキュメンタリー『河殤』が話題になった。
文献

『河殤』蘇暁康、王魯湘/総撰稿 三聯書店(香港)1988.12
『河殤』蘇暁康・王魯湘/編 辻康吾・橋本南都子/訳 弘文堂 1989.3.25
『重評《河殤》』鍾華民等/著 杭州大学出版社 1989.11

 

研究書・研究資料

『從傷痕文學到尋根文學 文革後十年的大陸文學流派』宋如珊/著 秀威資訊科技股份有限公司 2001.1

 ルーツ探しの文学とは、とりもなおさず、中国伝統文化の見直しと再評価であるが、それは地域文化の特徴を見直す方向に展開したと考えられる。そういった傾向を表す研究の流れは「二十世紀中国文学與区域文化叢書」の編纂という形で結果している。
参考

『都市漩流中的海派小説』呉福輝/著 湖南教育出版社 1995.8/17.50元
『斉魯文化與山東新文学』魏建・賈振勇/著 二十世紀中国文学與区域文化叢書 湖南教育出版社 1995.9
『湖南郷土文学與湘楚文化』劉洪濤/著 二十世紀中国文学與区域文化叢書 湖南教育出版社 1997.12

作成:青野繁治

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