八○后

Bālínghòu Xiěshǒu
八○后写手
80年代以降生まれ、新世紀 第一世代

解説:

80年代以降生まれ作家とは、文字通り80年代以降に生まれた若い作家たちである。彼らはもはや20世紀ではなく、21世紀に登場した新世代である。インターネットの普及を背景に登場した1970年代生まれの衛慧安妮宝貝と同時進行の形で、80年代生まれの若い書き手たちがネットを通じて、文学創作の世界に参加してきた。 彼らは多く中学生、高校生、大学生であり、学校を舞台とした作品が多いため、書店などでは「校園文 学」というジャンルに分類されているようである。

下の資料にあるように、もうすでにかなり分厚い層をなしており、『80’人的火车 』に 見るが如く、作家の出身地を鉄道の駅に見立てて、駅ごとに作品を配列して行く、というスタイルが可能であるのも、その層の広さを物語っている。

このように全国規模で、80年代生まれの10歳代から20歳代の若者が文学創作に従事し、それも相当の成功を得ている背景には、ネットワークの発達のほ かにもう一つの要素がある。それは「新概念作文コンクール」である。このコン クールは、1999年に第一回が開催されているが、その仕掛人は、上海の『萌芽』と いう雑誌の編集長趙長天で ある。彼は『不 是懺悔(邦題:心乱れて )』という中篇小説が日本語にも翻訳されているベテラン作家でもある。このコ ンクールの目玉は、コンクールで優秀な成績を収めた高校生には、優先的に北京大学、復旦大学などの一流大学に無試験で入学する資格が与えられる、というも ので、全国の高校生が、それを目的として、大挙して応募し、実際にコンクールの成績優秀者は、希望の大学に入学しているようだ。

この「新概念作文コンクール」の第一回の優勝者が、後に『三重門』(邦訳「上海ビート」サ ンマーク出版)で賛否両論の論議を呼んだ韓寒で ある。彼は当時まだ受験校松江第2中学高等部1年に在学中の16歳であった。しかし彼は結局高校を中退し、大学へは進まず、高等教育批判を行ったり、武侠 小説を発表したり、F1レースに傾倒したりと、若者らしい独自の道を歩んでいる。

上海大学の学生で、『幻城』や『夢 里花落知多少』がダントツのベストセラーを記録した郭敬明も同じ世代の作家で、読者 の圧倒的な支持を得ながら、何故か80年代生まれ作家の作品アンソロジーには選ばれていない。奇妙な現象である。

彼らは「本格派」と「偶像派」に二分されるという。例えばイケメン作家の韓寒や郭敬明、美女作家の張悦然は偶像派に属し、ロックに傾倒する春樹もファッション性から言って「偶像派」に分類さ れるようだ。一方、李傻傻は本格的な技巧派の作家と目されている。作家であり、大学中文系の教授の馬原らが、推しているのは、李のような「本格派」 で、一見ちゃらちゃらして見える「偶像派」はあまり評価していないようだ。しかし偶像派の韓寒にも趙長天などの編集者やそれから出版社のバックアップがあるのである。

本人たちにはそのような分類は、評論家が勝手に行ったもので、余り意味がないと受け止められているようだ。

個人的には、私には「優等生派」と「ドロップアウト派」に分かれているように見える。韓寒、春樹はある意味中国の教育体制 からドロップアウトすること自体が、作家としてのアイデンティティを 成立させている。一方、李傻傻や張悦然は、正統派の学生であり、正統派の文学創作者である。 いわば文学の優等生と言える。

そういう意味で一人気を吐いているのは、「美少女作家」と呼ばれる天才少女作家蒋方舟である。 1989年生まれの彼女は、2006年でようやく17歳、9歳のとき『打開天窓』で 作家デビュー 、11歳のとき『正在発育』を出版、13歳で『青春前期』を、15歳で『邪童正史』を出版している。特に『邪童正史』は、自ら運営するネットサイトに発表した歴史批評をまとめたもので、その鋭い諷刺の視点は、 大人も顔負けである。CCTVのテレビ番組などで、北京大学中文系の教授を相手に堂々と意見を述べるあたりは、怪童と言っても過言でないが、実際にはどこ にでもいる普通の活発な女の子であった。

作品集・アンソロジー

『重金属――八○后 实力派五虎将精品集』馬原/編 東方出版中心 2004.5/20.00元
『80’人的火车』唐朝晖/主编 湖南文艺出版社 2004.8/28.00元
『我们、我们――八○后的盛宴』(上・下)何睿・刘一寒/主编 中国文联出版社 2004.8/48.00元
『才子VS才女 青春树下』长江文艺出版社 2005.4/19.00元

作成:青野繁治

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