科学幻想小説

 中国のSF小説は、最初は西洋のSF小説の翻訳から始まった。ジュール・ベルヌの「八十日間世界一周」(逸儒訳「八十日環球記」1900)、「地底旅行」(盧藉東訳「地底旅行」1902)、「十五少年漂流記」(梁啓超訳「十五小豪傑」1907)、「月世界へ行く」(魯迅訳「月界旅行」1907)は最も早く中国に紹介されたSF小説である。その後も盛んではないが少しずつ翻訳が行われた。

創作としては、老舎の『猫城記』(1932)があるが、中国の近代文学において、SFというジャンルは、あまり盛んであったとは言えない。1949年以後の中国でも、鄭文光、童恩正、高士其らが登場して作品を書いているが、科学知識読み物として、児童文学に分類されていた。おとな向けのSFの創作が盛んになるのは、文化大革命終結後のことである。いわゆる「四つの現代化」のなかに、「科学技術の現代化」が織り込まれることによって、科学幻想小説の創作に拍車がかかったと言ってもいいだろう。鄭文光、童恩正のほかに、葉永烈が活躍した。近年は韓松、劉慈欣ら新世代が登場し、劉慈欣の『三体』は日本語に翻訳され、話題になった。

作品集

『科学幻想小説選』中国青年出版社 1980.6
『儿童文学  科学文艺作品选 1949-1979』人民文学出版社 1980.7
『中国当代科幻文学精選』四川人民出版社2011.1 

 
単行本

『韓松長篇科幻小説 紅色海洋』韓松/著 上海科学普及出版社 2004.11

邦訳

『三体』劉慈欣/著 早川書房 2019.7

参考書

『中国科学幻想小説事始』鄭文光、童恩正、葉永烈/著 池上正治/訳 イザラ書房 1990.3.31
『中国科学幻想文学館』(上・下)武田雅哉・林久之/著 [あじあブックス] 大修館書店 2001.12.1

作成:青野繁治

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